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資料

阪神・淡路大震災と災害情報

Disaster Information in the Great Hanshin−Awaji Earthquake in Japan廣井惰*

1. 行政の対応と何報システムの障害

(1) 震災被害の特徴
1月17日5時46分に突然発生した兵庫県南部地震は、死者6300人、負傷者4万1000人にのぼり、大正12年の関東大震災以来最大の被害になってしまった。ほどなくして「阪神・淡路大震災」と呼ばれるようになったこの地震は、戦後50年のなかでも最大の事件だったので、その数分後から全放送局が地震報道をスタートさせて以来、マスコミ各社は長期間にわたって洪水のように大量の情報を流し続けた。そして震災から数日のあいだ、多くの視聴者は無残に倒壊した木造家屋、異様に歪んだビル群、横倒しになった巨大な高速道路、手の施しようもなく広がっていく火災など、テレビ画面から次々に流れる映像に釘付けになり、その惨状のなかで、かけがえのない数千の生命が一挙に失われたという現実に、愕然とし、また懐然としたのである。戦後このかた、この震災ほどわれわれに多くの間題を投げかけた出来事はなかったのではないだろうか。
生きながらなす術もなく紅連の炎に包まれていく人たちに思いをいたし、国家とはそもそも何だろうかという根本的な問いを発した人たちもいた。日本の最も進んだ都市の一っといわれるあの神戸が、わずか十数秒の揺れによって壊滅してしまった様子を目撃して、われわれが享受してきた繁栄は砂上の楼閣だったのではないか、と自らの生き方に疑念を感じた人たちもいた。そして、テレビ画面に映し出される被災者のじっと苦難に耐え忍んでいる姿にうたれ、あらためて日本人とは何かを深く考えさせられた人たちも少なくなかったはずである。すでにいろいろなところでいわれているように、この阪神・淡路大震災の被害の特徴はまず第一に、10万棟にも達する多数の家屋の倒壊である。なかでもおびただしかったのは
*キーワード;阪神・淡路大震災、災害情報、防災行政無線、電話、生活情報、余震、流言東京大学社会情報研究所教授

 

 

 

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